天皇になった皇女たちを作りたいと思った理由
新刊の発売イベントも一通り終わりました(東京の講演は出版記念イベントという形ではなくて、講座という形でお話します)。ご来場くださったみなさま、場所を提供してくださった書店の担当者の皆様、本当にありがとうございました。
啓林堂さんでは月末の30日まで上村恭子の原画を含めたイラストとフルコトの雑貨を販売しておりますので、近くにお立ち寄りの際はぜひよろしくお願い致します。
イベントでもお話しましたが、この本を作りたいと思った理由に古代の女性天皇を含む、古代の女性たちの存在に私が救われたことがある、ということがあります。
日本書紀や続日本紀などの歴史書を読み、奈良の様々な場所を訪ねていくことで、古代に生きた女性たちの生き生きとした姿を知りました。「女性の役割」というものを押し付けられて、それに反発して生きてきた私としては、(当然身分や状況は違いますが)様々な女性の生き方を知ることで、楽になった部分というのが確実にありました。「女だから」とされてきたことは別に昔から当たり前じゃない。と思えるきっかけになったのが古代の女性たちでした。そんな古代の女性たちの姿を、日本書紀や続日本紀を中心にまとめて、奈良のゆかりの土地を訪ね、その人に思いを馳せる本を作りたかったのです。さらに美しいイラストで女性たちのイメージを膨らませるために、イラストもふんだんに取り入れたいと思いました。
また、様々な資料を読んでいると、人物の事績を語る際に性格まで決めつて記載しているものが結構あることが多かったのです。「こういうことをしたんだからこういう性格のはずだ」と決め付けていることにもやもやしていて。そういうふうに書きたいなら小説を書いたらいいのに、と思ったことが何度もあったことも、今回の本を作った理由のひとつです。なので、人の目を引くようなセンセーショナルな見出しもありませんし、基本的に日本書紀や続日本紀に記載されていないことには触れていません。たとえば、「この人物が犯人のあの事件に触れていない」とか思われるかもしれませんが、その事件の犯人がこの人物とは実は書いていないんですよね。どこにも。
また、いつも「病死」とされている人だったり、自ら館に火をかけて死んだとされている人も、実はどこにもそれが書かれていなかったりもします。わりと通説と思われているようなことも実は後世の人間の想像、思い込みが入っていることも多いんだなあと、この数年の古事記・日本書紀にまつわる仕事をしていて感じることでした。なので、そのあたりをもう少しフラットに書いた本を作りたかったのです。
再婚相手の皇后になり自らも二度即位した皇女、二度目以降の男女の交わりを断ることを公言した皇女、夫にも息子にも先立たれ自らが即位し卓越した政治能力を発揮した皇女、息子の遺志により即位した母、生涯独身のまま即位した皇女、史上唯一の皇太子となった皇女などなど。様々な女性がいて、どんなふうに生きたのか。知って、奈良を旅して、彼女たちの思いが息づいているこの土地を感じてもらいたいです。
編集さんの案で年表も入れています。これがかなり旅をしているときにも、役にたつと思いますし、今の自分の年齢だとこの人はこんなことがあったのね、と知ることもできます。ぜひ活用してください。
イベントでも聞かれましたが、次に古代の女性たちをテーマに本を作るなら、奈良以外も含めて、全国のいろんな社寺や史跡に残る、古代の皇女にまつわる伝説・縁起、由来、由緒などをまとめた本を作りたいと思っています。さらにニッチなテーマなので出版社から出していただけるかはわかりませんが。もし無理でもいつか、自費出版で少部数でも出したいなあと思ってます。奈良だけではなくて、日本全国各地で。(善光寺の縁起に斉明天皇が登場すること、持統天皇と三河国、千葉の印旛沼と不破内親王のこと、北陸の元正天皇関係、近江の元明天皇関係、伊勢の斎宮のことなどなど。)いつになるかわかりませんが作りたいものを作っていこうと思います。
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