井上内親王生誕1300年祭
昨日、五條の御霊神社めぐりをしてまいりました。
聖武天皇の長女で、斎宮をつとめ、光仁天皇の妃であった井上内親王という女性がかねてからとても気になっていました。
井上内親王の死後から天変地異や悪疫が流行し、彼女のたたりだと恐れられたことから御霊として祭られました。井上内親王を祀る御霊神社は、御陵のある五條に数多くあります。(五條の地名が御霊からきた説もありますね)
いくつかの御霊神社には以前から参拝したことがあったのですが、本宮である霊安寺町の御霊神社さんには参拝したことがなく今回はじめて行きました。
鳥居の外から中をみたら、拝殿のところに
「井上内親王生誕1300年祭」という幕がかかっておりました。
来年平成29年の10月21日、22日とのこと。
井上内親王といえば畏怖の対象。亡くなってからずっと怨霊として扱われてきた人が「生まれて」から何年の年という祭をされる!ということは、凄いことではないでしょうか。井上内親王が生まれたということのお祭。そう考えていたらなんだか泣きそうになってしまいました。また「生誕祭」の響きが祝祭的なムードを感じるということもあって、内親王が生まれ、存在していたことを、祝福するようなかんじに思えてしまいました。(実際のお祭はそういうものではないかもしれませんが)
頂いてきた御霊神社縁起をみると、この土地の伝説がいろいろあって
光仁天皇の名前である「白壁」は塗らない、とか藤原百川の讒言によって冤罪を蒙ったので「桃は育ったない」とか、井上内親王寄りなんですよね。大切に祭られてきたのだなと感じます。
五條の方々に井上内親王のことを色々と聞いてみたいです。
ちなみに昨日は早良親王好きな方と一緒だったので、早良親王も祭られている神社をメインに回りました。
栄山寺(御霊神社(小島))→井上内親王陵→他戸親王墓→御霊神社 本宮(霊安寺)→恵比須神社(御霊神社お旅所)→ 御霊神社(中之)→御霊神社(岡)→宇智神社(安生寺)→ 御霊神社(西阿田)→御霊神社(牧)
というかんじで参拝してきました。まだ他にもたくさんありますし、京都の御霊神社系にもお参りして来たいです。
洞川が好きで仕方ない(1)
奈良南部に本格的に足を踏み入れたのは2010年でした。それまでも、天川吉野十津川五條は何度も行ってはいたものの、南部の魅力に魅せられて、何度も通うことになったきっかけは2010年です。なぜ2010年だったかというと、とにかく人が多かったから。
平城遷都祭のとき、ご開帳づくしの奈良(吉野町より北)は今まで直接目のまえで拝めなかった様々なものに参拝することが出来たり、入れなかった建築物の中に入ることができ、様々なものが目白押しでした。その機会だからこそ行けたところもあって楽しかったのですが、普段静かに参拝していたところが常に人だらけ、というのはちょっとしたストレスだったのかもしれません。
それと、無料や割引で使える施設が掲載されているパスポートが販売されたので購入したのですが、わりと南部の温泉施設なども多かったのです。せっかくなので使いたいから色々行ってみよう!とまずはそれ以前に日帰りでちょっとだけ行ってみた洞川へ、GWに行くことにしました。
2013年に発行した「洞川帖」洞川帖 - 旅とくらしの玉手箱 フルコト通販という冊子の中でも触れていますが、このとき一泊した洞川に、何か新たなスイッチを入れてもらったようです。大好きになってしまい、この時から丸4年間、東京にいるときから毎月通いました。洞川に行く前後に南部のほかの土地にも寄るようになり、南部のほかの場所もどんどん好きになりました。
水が綺麗だったり、空気が綺麗だったり、ご飯が美味しかったり、温泉が気持ちよかったり、星が綺麗だったり、町並みに風情があったり、地元の人たちと交流するのが楽しかったりと、いろいろですが、何よりも地元の人たちの「信仰とともに生きている」姿、そして、信仰とともに長い間培われてきた「旅人を受け入れてくれる力」に惹かれているのかもしれません。
私のつたない文章では洞川の魅力の何万分の一も表現できていないので、興味を持ったら即行ってもらいたいです。
奈良が好きで好きで、でも「どこが一番好きなのか?」と聞かれても、好きなところが多すぎて「ここ!」といえるところがなかったのです。が、今は洞川が一番好きだとはっきり言えます。
そんなわけで洞川のエピソードはこれからいくつも書いていきたいと思います。
平城宮跡と近鉄電車
夜の近鉄電車に乗り、車内に人が少ないときにするひそかな楽しみがあります。
ライトアップをしている時間帯に平城宮跡を通過するとき、大極殿を背にする形で座席に座ります。すると、朱雀門のところで大極殿をバッグにした自分が、対面の窓に映るんです。
ほんの一瞬のことですが、朱雀門、自分、大極殿が重なる瞬間があります。大極殿を背景にした自分がみられるということがなかなか楽しいのです。誰かに写真を撮ってもらっても、朱雀門がむこうに見える状態で大極殿と自分が見えるということもこの時にしか楽しめません。夜なこともあいまって、時間を越えて不思議な感覚に陥る瞬間です。ちょっと面白いので、車内に人が少ないときはお試しください。
近鉄電車といえば、ちょっと前から平城宮跡を通るときに大極殿と朱雀門を案内するアナウンスが入るようになりました。(いつでもあるわけではないようですが。)
アナウンスが入ると車内にいる観光客は外をみて、大極殿や朱雀門に気づき、わあ!と歓声を上げます。はじめてこのアナウンスを聞いて車内の人の反応を見たとき、なんだか嬉しくなってしまいました。
宮殿があった場所だからといってこんなに広い範囲で残されている場所というのは、他にはあまりありません。見渡す限りの広い土地と空。そして昔から変わることのない山々に囲まれた場所。足元には遺構や遺物が眠っている…。都だったのはたった80年数年でしたが、様々な文物がやってきて、様々な出来事が生まれていった時代でした。旅する者にとっては、歴史に様々な思いを馳せられる場所のひとつでもあります。
わたしが奈良に通い始めた最初のころは、JRを利用したり夜行バスで奈良に直通で入ってしまったり、阿部野橋から飛鳥方面に直接行ってしまうことも多かったのです。なので京都駅から近鉄に乗って、平城宮跡に入っていくときの感動を知ったのは、旅をしはじめてから数年経ってからでした。
初めて通ったときの「ああ私いま、奈良に入ったんだ!」という感動は、今でもまざまざと思い返せます。あの体験をしてから今はもう奈良を出るときも、どこかから奈良に帰ってくるときも、ほとんど近鉄を利用するようになってしまいました。
朱雀門の内側から、いってきます、内側へ、ただいま。と出来る今の環境はとても幸せです。
奈良の宣伝は中央線沿線で
東京に17年間住んでいましたが、奈良に興味を持ちそうな人が住んでいるのは、中央線沿線、中野~三鷹くらいまで、というイメージがあります。「奈良を知ったら、一度来てみたら、奈良を好きになってくれそうな人が居るのでは?」と思うんです。
これを東京に住んでいる奈良好きな人に言うと、わりと納得されることが多いので、あながち間違いではないのかな?と思っています。
なので、奈良の宣伝を都内の主要駅でやるのも大切ですが、この沿線でやればいいのになあと以前からずっと思っていました。奈良を好きになってくれそうな人がいる、来る沿線なのではないかなぁ・・・。
この付近には、のんびり過ごせる場所があるし、ほどよく自然もあるし、個人で営業しているようなお店も多いし、買い物も生活も便利で面白いところが多くて生活しやすいです。西荻窪が好きで通っていたこともありました。住んでいたこともあります。西荻窪あたりがなんとなく奈良の空気に近いと思っていて、勝手な擬似奈良を西荻にみていたところがあったかもしれません。今は駅も新しくなって変わってしまったところも多いのですが、10年くらい前の西荻は、10年くらい前のならまちと通じる空気があったと思います。(個人の主観です)。
杉並区の一部では京成バスが走っています。京成バスは夜行バスを奈良交通と共同運行しているので、私が住んでいた当時は車内に奈良広告が貼られていました。朝通勤途中にその広告を偶然見かけると、元気が出ましたね。
「奈良は朝がいいですよ」というポスターだったと思います。ネットで探しても見つかりませんが、奈良交通さんなどに尋ねたらわかるかな?
見かけるたびに奈良へ行きたい思いが募ったものでした。
かたじけなさに 涙こぼるる
奈良に人が来る理由は様々だと思います。
なぜ奈良なの?奈良が好きな理由は?とずっと聞かれてきましたが、奈良に通っていた理由はひとつだけではないし、いまだに明確な答えは出せていません。聞いた相手が納得できるような、期待しているような答えは全く出せていなくて、毎回聞かれるたびに申し訳ないな、と思っています。ですがせっかくブログをはじめたので、何度かに分けて何がどう好きなのかを書いていきます。
私が奈良を好きな理由のひとつに、神仏がおわす場所だということがあります。日本各地、神仏がおわすところはたくさんあって、もちろん奈良だけではないのですが、私は奈良にいる神様や仏様に惹かれるのです。
西行が伊勢に参詣した際に
「なにごとの おわしますをば 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」
という歌を詠んだそうですが、その境地に共感することが、奈良ではたびたびありました。
たとえば、金峯山寺さんでの蔵王権現様ご開帳時の「発露の間」での体験もそのひとつです。大きな蔵王権現様と一対一になって、自分の気持を権現様の前で自分の気持を「発露」してもいいのだ、と思ったときに、涙がぶわっとあふれ出ました。
こんなふうに気持をあらわにしてもいい存在がいるということのありがたさに、心が震えたのだと思います。
いろんなことを我慢したり、耐えたりして生活していることも多い現代社会だと思うのです。つらいことがあったときに「大きな存在」である神様や仏様に手を合わせて、いまの気持を心の中で伝えてもいいのだ。怒りだったり憤りだったり悲しみだったりしんどさだったりと、そんなぼろぼろな気持だったとしても、聞いてくれて見守ってくれる大きさが、人智を超越した存在にはあるのかもしれないと、感じることができる。人間は小さいし、弱い。そんな部分をさらけ出してもいい神仏がいる。
そんなふうに思わせてくれる経験を何度もしました。私はそういうことを感じたのが奈良でした。そのつど、どんどん奈良にのめりこんでいきました。
そして、信仰している方たちとの出会いというものもあります。私は特定の神仏への信仰はしておりませんが、信仰をもっている人たちの存在というのは、奈良に旅をしてきた中でもとても大きいものでした。またそのあたりは別途詳しく書きたいと思います。
守ってきたもの、続いてきたもの、これからも続いていくもの。これからも見ていけたらいいなと思っています。
2016年3月7日産経新聞掲載
産経新聞奈良版に、ことのまあかりのことを掲載していただきました。
「うましうるわし奈良の10年」のこと。
「うましうるわし奈良の10年」という本が昨年12月に発売されました。
この本は、JR東海の「いま奈良にいます」キャンペーンに続くもので
この10年間、JR東海管轄の首都圏に流れていた奈良の広告の写真とコピーを集めたものです。
「いま奈良にいます」が終了した後、「うましうるわし奈良」まで少し間が開いたので、京都のような宣伝を奈良はもうしないのかな・・・と残念がっていた時期もありました。
私が「うましうるわし奈良」のCMをはじめて見たのは会社の昼休みで
私はその日とにかく、仕事でミスをしたのか何か苦労をして凄く疲れていて
ああもう本当に疲れた、、、早く帰って寝たい・・・
と思いながらぼんやりしていました。
するとナレーションの「奈良」という声とともにあのテーマ曲の「だったん人の踊り」が流れてきました。
驚いて振り返ると、東大寺の美しい景色とともに修二会の映像が。あのときの衝撃は鮮明に覚えています。
見た瞬間、会社だったのにぼろ泣きしてしまいました。
「そこには、大きな歴史がある。
気高くおおらかな美しさがある。
そして、悠々と流れる時間がある。
大和の国の先人たちは、高い志を持ち、
この国に高度な国家を築き上げた。
さあ、奈良へ。
日本人の原点を発見する悠久の旅へ」
今書き写しただけでも、このコピーは泣けます。
ほんとにありがたかったなあ。「私には奈良がある、奈良に行きたいから働く」と思えば、頑張れたんですよね。
奈良が好きだなあ・・・行きたいなあ・・・その気持ちを呼び起こさせてくれるのに「うましうるわし奈良」のCMには絶大な効果がありました。これは私だけではないです。
ほんとにたくさんの人がこのCMを見て、奈良にあこがれて、奈良に来ています。
それからもテレビCMはもちろんのこと、大きなターミナル駅や地下鉄の中などで新たなお寺の写真やコピーを見つけるたびに嬉しかったし、
今度はこのお寺なのね!と喜んだし、
法隆寺さんの撮影中に偶然参拝して「こんなふうに撮影するんだ」と驚いたし、
奈良旅が終わって品川駅に降り立ったら、また新しいうましうるわし奈良のポスターが貼られていて「家にすら帰ってないのにまた行きたくなる!」と思わせてくれたりと、
遠方に住んで奈良に通っていた私にとってはとても大好きで、大切なCMでした。
もう10年になるんですね。
すばらしい数々の御仏、壮大な情景、静謐なお寺の空間
そういうものを見せてくれた映像とコピーでした。
今回の本は写真もコピーも一部のみしか掲載されていません
そして、東京駅の八重洲口の柱という柱への広告や、
どんなふうに宣伝されていたか、テレビでどのくらい流れていたかが掲載されているわけではないので、
美しい写真とことばが並んでいる本だな、で終わるかもしれませんが、
「うましうるわし奈良」の奈良が、首都圏の人たちの抱いている奈良のイメージです。
そしてそういうものを求めて、奈良にきてる人たちが多いことも知ってもらいたいです。
わたしはもう奈良に住んでしまったので、テレビCMで出会って感動する、ということは出来ないけれど
これからまだまだ続いていってほしいし、
奈良に行ったことがない人には奈良にいってみたいなと思わせ、奈良が好きな人にはもっと奈良に行きたい!と感じさせるCMで有り続けて欲しいです。
CMやポスターは一部こちらから見られます
http://nara.jr-central.co.jp/campaign/adgallery/index.html
昨年はJR東海さんのお仕事でまほろば館で講演させていただいて心底嬉しかったです。
ありがとうございました。